2025年6月10日、静岡県小山町にある「サンファーム富士小山・令和」の高糖度トマト「アメーラ」の圃場取材に行きました。「サンファーム富士小山・令和」は標高450メートルに位置する富士山の裾野に位置する農場で、他のアメーラの圃場のある海沿いの焼津市よりも3度ほど気温は低く、日中も比較的涼しい環境です。
【育苗・植え付け】
圃場を見る前に、育苗施設を見せてもらいました。
①、②・・・と番号の振られた育苗庫に入るとアメーラの苗木が整然と並んでいました。蛍光灯の光を当てながらある程度の大きさまで成長したら「ココピート」という椰子殼を使用した培地に次々と移し替え、軽トラックへどんどん積んでいきます。
作業場は圃場(ハウス棟)と直結しており、①の育苗庫で育った苗は①の圃場へ植え付けられます。圃場は約8haもあり、非常に広大です。毎日どこかのハウスで収穫、苗の入れ替えが代わるがわる行われており、かなり効率化されていると感じました。
【着果~収穫】
アメーラの品質維持については、徹底した糖度管理があります。ここでは初収穫を行う前に糖度検査を行ってから収穫をしており、選果場(パッキングセンター)でも全量検査を実施しています。そこで基準を下回っている状態が3回続けば「アメーラ」の名を冠することはできません。夏場はどうしても小玉になり、上段に実がつきにくいですが、新しい栽培技術をどんどん取り込むことで、今は3段収穫も可能になっているとのことでした。
アメーラルビンズ・ルビンズゴールド栽培の工夫として、ハチ(マルハナバチ)の導入があります。受粉等の作業をハチにさせることでの省力化はもちろん、人の出入りを介して侵入してきた害虫もほぼ無くなり、薬剤散布も最小限に留めています。常時70匹いる小さな働きバチがアメーラの安全の下支えをしているんですね。
収穫されたものは午後2時頃までに作業所へと運ばれます。ここへは日量軽トラック5台分ほどのトマトが搬入されます。作業所で梱包されたトマトは全量藤枝市にある選果場(パッキングセンター)へと運ばれます。ここでは年間1800万個ものトマトが検査されています。ここでの選果基準をクリアしたものが晴れて「アメーラ」として出荷されていきます。
【こだわり・栽培の苦労】
アメーラの育苗施設・圃場は温度管理が徹底されています。過去には平成27年の台風により停電被害があり、発電装置を持って回って施設内の給液や温度管理に奔走したそうです。
また、栽培に関しては摘果は特にせず、ちゃんと実がつくものをわざわざ間引くことはしないとのことでした。アメーラは段が揃い、花も外向きにつくよう栽培・収穫にできるだけ人の手をかけないよう多くの工夫がされていました。圃場や作業所では地元の福祉作業所の方も作業されていました。作業所からハウスへ続く道はすべて舗装され、清掃も行き届いていました。車いすの方も使用できる屋外掃除機も導入されているとのことでした。また、収穫を終えた樹は堆肥に加工し、近隣の農家やこども園に無償で提供されていて、特に根菜類の生育がよくなると評判のようです。
アメーラ栽培では「地球を汚さない」、つまり生産の過程で廃液を出さない取り組みを行っており、堆肥への加工もそうした地域循環型農業の一環だといえます。
【さいごに】
上記のように、アメーラは厳格な栽培・糖度管理がなされていますが、季節によっていろいろな食べ方が楽しめます。夏の時期だとサラダや冷製パスタに添えたり、冬だとピザなど温かなメニューもいいかもしれません。私自身、十数年前からアメーラを食べていますが、周年出回る供給体制だからこそ季節季節で異なる味を楽しみ、食べ方を変えてみてはいかがでしょうか。これまで苦労して築き上げてきた「職人技」の味をみなさまにも感じていただきたいと思います。(S)