10月26日(火)、東京青果卸売場では山梨県 JA南アルプス市の『あんぽ柿』の宣伝会が行われました。
『あんぽ柿』は収穫した柿の皮を剥き、硫黄薫蒸してから乾燥させることで出来上がります。いわゆる「干柿」の一種ですが、表面に白い粉を吹くタイプの「ころ柿」が水分含有率25~30%程度なのに対し、『あんぽ柿』は50%程度と高く、食感が柔らかいのが特徴。中はとろりとしており、お茶請けにもお勧めの甘味です。江戸時代には天日で乾燥した干し柿は『天干し柿(あまぼしがき)』と称されており、これが訛って『あんぽ柿』となったと云われます。
南アルプス市は山梨県の西側に位置します。寒暖差が大きいことや扇状地の上にあり、水はけが良い土壌なことから優良な果実が産出されています。
地域の遺跡では平安時代の住居跡からカキノキ属の種子が発見されており、古くから柿が食べられていたと考えられています。また、江戸時代になると柿は甲斐国の名産品としてぶどうや桃、梨などと共に『甲州八珍果』に数えられ、江戸に運ばれ珍重されていました。
時代を経て干し柿の火力乾燥法が開発されると品質が安定し、昭和初期には当地域で作られた「ころ柿」がアメリカにも輸出されていたそうです。
あんぽ柿に使われるのは平核無や百目といった渋柿です。渋柿はそのまま食べると口の中がイガイガして大変不快な思いをします。それがどうしてこんなに甘くて美味しい『あんぽ柿』に変わるのでしょう?
それは渋みの原因である「タンニン」に原因があります。「タンニン」は口の中で溶け出して、口腔内表面の粘膜と結合します。こうなると口内のぬるぬるした潤滑性が失われて収斂作用を起こします。これが渋みの原因です。渋みは「味」ではなく「口内感覚の違和」がもたらしているのです。
あんぽ柿を作る際に皮を剥かれた柿は、表面に膜が形成されて呼吸ができなくなります。すると果実内にアセトアルデヒドが発生してタンニンと結合。こうなるとタンニンは口の中で溶けなくなるため渋みを感じなくなるのです。渋柿をアルコールや二酸化炭素で脱渋するのもこれと同様の仕組みです。こうして処理された甘柿やあんぽ柿は甘く感じられますが、この甘みは果実内に元からあった成分であり、タンニンが糖に変化したわけではありません。
本年産の柿の生育は5月の開花期に天候が安定したため結実は良好となり、平核無・大和百目は着果過多の傾向で推移しました。
7月以降は梅雨の長雨や8月の秋雨前線の影響で大和百目を中心に生理落果が見られ、全体的に昨年の収量に対し減収となる形です。11月中旬に出荷ピークを迎える見通しです。